「Two of us」前編  

シナリオ

今回は、シナリオを用意しました。映像を思い浮かべながらお楽しみください。

音楽は、冒頭シーンの終わりで、小柳ゆき さんの heaven feelin’ 

最後のシーンで、同じく小柳ゆき さんの be aliveを聞いて頂けるといいかなと

思います。

末尾に今週の”患者さん向けの大きな字の読み物”も入れました。患者さんが読んだり、

写真をお絵かきの題材にしたり、白黒でコピーして塗り絵にしたりして使ってださい。

冒頭、海の場面は、小柳ゆきさんのアルバムExpansionより、Heaven Feelin’ を是非聞いてみてください。
暗く波が高くなった海に上から近づいていく感じ。そんな映像にぴったりな音楽です。

Heaven Feelin'
Two of us    前編

登場人物

栢山 優   (25)

山岸  恵   (25)優の幼馴染

浅田  美紀 (25)優の彼女

○荒れた海。薄暮

上空からカメラがゆっくり回転しながら、海面に近づいていく。海のうねりが、遠景から近景へとはっきりと見えてくる。(近景から、小柳ゆき Heaven Feelin’

カメラは横からの視点に移り、波が激しく隆起して数回行き去るのが見える。波が最大限持ち上がった点で映像は静止し、そのまま、カメラが横にくるっと回り、波の前に移動する。大きな波が目の前にそびえたつ。後ろから栢山優がパドリングをしてカメラの視点を抜き去っていく。薄暗いので顔は見えない。波が動きだし、優を包み込もうとする。優は、ボードの先端を波の中に突き刺すようにして、ドルフィンスルーで海へ潜り込む。優の体がゆっくりと波の中に入っていく。

カメラが波の前部から上部へ移動。波の後ろを映す。しばらくして、その海面から優が現れパドリングしてさらに沖の方へパドリングをする。

カメラは、ボードにまたいで座る優を後ろから撮る。優はそこから前へパドリングし、次の波に乗るが、立ったところで バランスを崩して倒れ波へ放り投げられる。

海の中、地面にぶつかり砂ほこりが舞い立つ。その向こうで半分に折れたサーフボードが海水の中を踊っている。サーフボードが現れたところからスローモーションになり、

タイトル Two of us  が画面に現れる。  

○真夜中の暗い海岸。波が打ちつける壁。

真っ暗。”カチッ”と懐中電灯をつける音。暗闇の海岸で懐中電灯の光りが堤防の壁を映す。早く動いていた懐中電灯の光がゆっくりとした動きとなり、堤防の壁と海の間を照らす。光の中に山岸恵の手が現れる。壁を触りながら横にうごく。

壁に鍵のマークが薄く書いてあり、海の奥にチェーンが光る。

恵  「あった。」山岸恵が小声でつぶやく。

恵がチェーンをからから、と引き出す。海の中から錘の石、金属のチェーンとそれにつながっているワインのビンにビニールがまかれたようなものが藻にからまった状態で現れる。恵はビニール袋にそれを入れ、大事そうにかかえて走り去っていく。カメラは、それを追って町の夜景を映し出す。

○恵の家。リビング 

机の携帯が鳴る。パジャマ姿の恵が携帯に手をのばす。恵はベッドのふちに座っている。朝の光が差し込む。

恵   「もしもし?」

美紀  「・・・・」無言

恵   「もしもし?」恵は首をかしげながら、もう一度聞く

美紀の声「恵、、、」浅田美紀が細い声で呼びかける。

恵   「美紀? 久しぶり。どうしたの?」

美紀  「・・・・」

恵   「なんかあったの?」

美紀  「・・・・」

恵   「美紀?」

カメラは恵の部屋をくるりと映し出す。窓の外は都会の景色ボディーボードとトロフィー、壁に貼ってあるたくさんの写真の中から恵と美紀が映っている写真によっていく。少しずつ写真の中の美紀に近づき、シーンが美紀の部屋に移る。

○浅田美紀の部屋

壁にもたれて、足を投げ出して電話をしている美紀を映す。

美紀      「優が、、、死んじゃった」

恵の声 「え? 」

美紀      「さっき連絡があって、海で死んじゃったって」

恵の声 「海?サーフィンで?」

美紀      「ん」

恵の声 「・・・間違いってことはないの?」

美紀      「んーん。昨日冷たくなっちゃったから今日は暖めてあげるって。」

恵の声 「誰?」

美紀      「おねえさんが、、、泣いてた、、、どうしたらいいんだろう?恵」

恵の声 「ほんとに死んじゃったって言ってたの?」

美紀      「・・・」美紀、涙を流す。

カメラが動くと美紀の横にすわって電話をしている恵が挿入されている。

恵 「美紀、とにかく優のところに行こう。」

美紀 「いや」

恵 「なんで? 行かなきゃ。行かなきゃ信じられないよ」

美紀 「いや」

恵 「美紀が来るのを待ってるはずだよ。婚約したんだもん」

美紀 「・・・・」

恵 「美紀。しっかりして」恵は強い調子で説得する。

美紀 「・・・・」

恵 「美紀」

美紀 「こわいよ。」

恵 「いっしょにいこ。ね」

美紀 「・・・・ん」

恵 「じゃ、すぐ、いくね。、車で、たぶん、お昼までにはそっちに着けると思う。   待っててね。わかった?」

美紀      「うん・・・・恵?」

恵       「え?」

美紀      「ありがと」

恵       「うん。じゃ、準備してね。じゃあね。」

美紀      「うん」と美紀は答え携帯を耳からはずす。

恵も同時に携帯をおろし、二人(美紀と合成されたの恵)が顔を横にむけてお互いを見詰め合う。カメラは美紀側に回り込み、恵を正面からみつめる。視点はだんだん恵に近づき、目に接近し、目に入っていく。目には昔のシーンが映りだされる。

○ 恵の回想シーン

海の町で幼馴染だった優と恵の学生時代。

○ 天気のいい日堤防にすわり海をながめる優と恵:回想

並んでいる二人を横から映す。栢山優は手をうしろについて、山岸恵は前のめりで座っている。山岸恵は、手を動かしている。その手には凧糸をもっていて、座りながら凧をあげている。会話の最後で、カメラは二人の後ろ姿と凧を映す。

優   「へへ、できたよ小説」

恵   「お、ついにできたんだ」堤防にすわり裸足で足をぶらぶらさせる恵。

優   「うん。途中までは完璧」

恵   「え? できたって、完成したんじゃないの?」

優   「ん。まあね。いろいろ考えてみたんだけど、仕上げるのは4年待とうか

なって思って」

恵   「なんで? 結末浮かばないの?」

優   「迷ってる。」

恵   「ふーん。変なの。なんかもったいないな」

○ 砂浜 優と恵:回想の続き

砂浜で山を作って、棒倒しをしている。ふたりが交互に山をくずしながら会話をする。二人の視線は、砂の山。

恵   「で、なんで4年なの?」恵、砂の山の両側の砂を両手でかき出す。

優   「4年たつと社会人になって2年目じゃない。」次は優が同じことをする

恵   「うん」同様のことを以降会話ごとに続ける

優   「なんかもっと大人になっているような気がしない?」

恵   「うん」

優   「もうちょっといろいろ経験してから考えたいんだよね。」

恵   「そりゃ 4年じゃたりないかもね。優が4年で熟成するとは思えないよ。」

優   「あっ」砂の棒がたおれる

優   「そうかな。ま、そん時また考えりゃいいだろ。」はじめて優が恵を見る。

○ 自転車 優と恵:回想の続き

自転車を二人のり。蛇行する自転車が遠くからむかってくる。

カメラは腰から下だけうつす。会話の最後のほうでカメラが上半身も映す。恵が前でこいでいて、優が後ろに乗ってコーラを飲んでいる。

恵   「で、どういう内容なの?それ」

優   「え? なんだって」優が聞き返す。

恵   「どういう内容なの?」恵が大きな声で聞く

優   「おれのサーフボード知ってるだろ。ふちが青いやつ」やや大きな声で

恵   「うん」

優   「あのボード、去年サンタクルーズ行ったとき買った中古なんだ。」

恵   「うん」

優   「この前、波待ってるとき、ふっと見たらマジックでなんか書いてあるんだよ。」

恵   「おっと」自転車がさらによろける。ここで、カメラが恵、優の全身をうつす。

優   「おい、気をつけろよ」優がコーラを持っている手を上げて叫ぶ

○ 喫茶店 優と恵 :回想の続き

喫茶店の紙ナプキンに From Rick To my best friend, Nickと書く          

(最後のNickぐらいから)ところを映す。

喫茶店の優と恵の2ショット。

優   「ずっと気づかなかったんだけど、From Rick To my best friend, Nick

って書いてあんだよ。」

恵   「RickとNick?」ストローをかみながら

優   「そう。Rickっていう人は、なんでNickっていう人にボードを渡したんだろう

って気になっちゃてさ。どういうシチュエーションだと思う?」

恵   「うーん。誕生日? ゲイの人かな。」空になったジュースをぶくぶくさせながら

優 「ばーか。いろいろ想像したら、何か書きたくなっちゃったんだよ。それがこれ」

恵   「ふーん。で、どういうシチュエーションにしたの?」

○喫茶店テーブルの上。

優が話しながら、塩、胡椒等の入れ物を置いていく。優の手だけ映る。

優の声   「んー・・・・中古屋でボードを買った青年がいてね、、、」優の手、塩の入れ物を

取って、テーブルの真中に置く。

優の声   「で、おんなじように、ボードに書かれたサインを見つけんの。」優の手、From Rick…と書いたキッチンペーパーを塩の入れ物の横に動かす。

優の声   「この青年、奥さんがいるんだけど、どうもうまくいってなくて、、、生活がね、なんていうんだろうな、だるいんだよね。」優の手、胡椒の入れ物を塩の入れ物の横に動かす。

優の声 「で、なんとなくボードのサインに興味をひかれて、奥さん残してなんにも   言わずに家をでて元の持ち主を探しに出ちゃうんだ。」

優の手、塩の入れ物を胡椒の入れ物から遠ざける。

話しをする優と、両手頬杖をついて聞き入る恵の2ショット

優  「青年がやっとのことで見つけたその相手は、もう結構年配で、ボードの話しを

聞くと、少し考えてから、なつかしそうに話してくれたんだ。」

(後編に続く)

次回に続きます。小説は、読んだ方々が、それぞれのシーンを想い、想像し、感じてもらえれば良いのですが、シナリオは、読んだ方々皆さんの頭に、同じ映像を届けて映写して頂きたくなるものです。 まずは、Youtubeで小柳ゆきさんのアルバムHeaven Feelin’を聴きながら眠りに入って頂ければと思います。

小柳ゆき be alive < #stayhome >

患者さん向けの大きな字の読み物は、下記からダウンロードしてご活用ください。

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